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インタビュー「自宅で最期を迎えたい」を支える

インタビュー「自宅で最期を迎えたい」を支える

     

今回は、自宅で80代の旦那さん(Aさん)を看取った奥様(Bさん)にインタビューさせていただきました。

AさんとBさんはお二人暮らしです。

Aさんは糖尿病や認知症、他にも多数の疾患を患い、総合病院に通院していました。年齢を重ね、認知症が徐々に進行したことで、入退院を繰り返すようになりました。通院が困難になった頃から、訪問診療を導入しました。

Aさんは訪問看護を約3年間利用されたのち、ご自宅で亡くなりました。今回は自宅で療養するということ、自宅で最期を迎えるということを少しでもイメージしてもらえればと思い、インタビューにまとめました。Aさん、Bさんとよいとこの経験を皆様と共有できれば幸いです。

インタビュアー:花水遥

【自宅療養に向けて訪問看護を利用することになった】

花水:最初に訪問看護を利用したきっかけは何ですか?

Bさん:夫は糖尿病があり、インシュリン注射をしていました。認知症が始まり、自分でインシュリン注射ができなくなり、意識が変になって何度か入院しました。入院先の病院の看護師さんや相談員さんが将来のことも考えて訪問看護を利用してはどうかと勧めてくれ、利用することになりました。

花水:どのようなペースで訪問看護を利用しましたか?

Bさん:退院直後は週3回はデイサービス、週4回は訪問看護を利用しました。自宅での生活に慣れた頃に訪問看護の回数を週3回に減らしました。

花水:訪問看護師はどんなことをしましたか?

Bさん:週2回は訪問時間が20分だったので血圧を測ったり、血糖値を測ってインシュリン注射をしてもらいました。週1回は訪問時間が60分だったので、注射の他に部屋の中でリハビリをしたり、体力づくりの為に近くの公園に散歩に行ったりしてもらいました。お薬を飲まないこともあって、私が言っても聞かないので看護師さんが飲ませてくることもありました。

【病状や認知症が進行し、デイサービスに行けない日が増えてくる】

花水:自宅で看取ることを決意したきっかけはなんですか?

Bさん:以前から本人と、「死ぬときはどうする?」、「施設に入る?」という話はしていました。まだ本人がしっかりしているうちに、将来の話をしておいたのは良かったと思っています。話し合ったときに、「施設は淋しい。」と言っていました。「ここで死ぬのでいいの?」って確認したら、「うん、いい。」って。とことんその話はしました。あの人、わがままだったし、そういう意味でも自宅で思うように過ごせてよかったと思うんです。私も最後はそうしたいと思っているので、その時はまたよろしくね。

花水:訪問看護の頻度はかわりましたか?

Bさん:デイサービスに週3回、訪問看護が週3回でしたけど、亡くなる1カ月前くらいからデイサービスに行けない日もありました。亡くなる2週間前くらいから転ぶことが増えて、訪問看護さんに緊急で来てもらうことも何度もありました。亡くなる1週間くらい前からはご飯も食べられなくなり、トイレも行けず寝たきりになったので、毎日来てもらって体の状態をみてもらったり、一緒に体拭きをしたりしました。1日に2回、3回来てもらうこともありました。

花水:看取りまでの間の、奥様の気持ちの変化を教えてください。

Bさん:食欲が落ちることはなかった。体力つけなきゃと思って一生懸命食べてましたもん。そうじゃなきゃ私が倒れていたかもしれない。

気持ちの波みたいなものもあんまりなかったのよ。でも、苦しまないで最期を迎えて欲しいって思いました。将来のことを話した時に、「苦しむのは嫌。」、「痛いのも嫌。」って言ってたから、苦しまずに最期を迎えられた時は、本当に良かったと思った。

花水:看取りまでの間の、奥様の体の変化を教えてください。

Bさん:物音がすると、「転んだのかな?」等心配になり、頻繁に目が覚めていました。夜眠れなければ、デイサービスに行っている間に眠ったり、短時間でもいいから睡眠はとるようにしました。

亡くなってしばらくは体の痛みや目の痛みがあったけれど、だんだん落ち着きました。

【最期を迎えた後の想い】

花水:家で看取って良かったと思う点を教えてください。

Bさん:コロナが流行ってからは簡単に面会できないって聞くので、家で良かったなって思います。あとは、わがままが言えたってことが一番じゃないかと思う。自分の好きなように、あの人のペースが乱されなかったって言うのは良かったと思う。最高だったと思う。

花水:自宅で看取った全体的な感想を教えてください。

Bさん:最初は看護師さんに来てもらうのって悪いかなって思ったこともありました。「あなた、怠けてるんじゃないの?」って誰かに言われそうな気がして。看護師さんや先生に来てもらえたことは、私にとっても楽でした。すごく助かった。来てもらえなかったら私が倒れていたと思う。

最期は穏やかだったので良かった、ほっとしました。苦しまずに最期を迎えられたことが、私にとって本当に救いです。

花水:Aさんが亡くなって約半年経ちました。今の気持ちを教えてください。今でも家で看取ってよかったと思いますか?

Bさん:今でも時々、もう少し生きていて欲しかったと思うことはあります。つまんない話をする相手がいなくなっちゃったからね。でも、寿命だったと思うのよ、まぁ、時間が必要ね。

最後が穏やかだったこと、本人のペースで最期まで過ごせたから、そういう点では悔いはない。

花水:最後に、奥様にとって、訪問看護はどのような存在でしたか?

Bさん:とってもありがたかった。来てくれるとやっぱり助かった。体も見てもらえて、薬のことも教えてもらえて、やっぱりプロはいいなと思った。来てもらえて、心配なこととか相談できたでしょ?それが良かったと思う。定期的にきてもらえれば、ちょっとした変化にも気づいてもらえるし。先生にも、訪問看護さんにも来てもらえて本当に良かったと思うの。

         

 BさんはAさんをお一人で介護をし、自宅で看取ったことは、体力的にも精神的にも大変だったことと思います。大変ではありましたが、Bさんの、「悔いはない。」、「最高だったと思う。」、「訪問看護さんに来てもらえてよかった。」というお言葉を聞くことができ、私たちもAさんとBさんお二人の人生を支えるお手伝いが少しだけできたのではないかと幸せに思っています。

 夏に散骨の予定があり、Bさんはまだまだお忙しい日々を過ごしておられました。インタビュー中も涙を流しながらお話ししてくれる場面もありましたが、今は中止していた趣味の水泳も少しずつ再開しており、前を向いて第二の人生を歩んでおられました。

※個人情報が特定されないように、配慮しています。

※写真の掲載について、Bさんの了解を得ています。

最後に

いかがでしたでしょうか

厚生労働省の発表によると

1950年頃には亡くなった方の8割は自宅での死亡でした。

2015年頃には亡くなった方の8割近くが病院での死亡でした。

これは先進国の中でも突出して高い割合です。アメリカでの病院死は全体の4割程度、福祉先進国のオランダでは3割以下と言われています。

一方で、「最期を迎える場所」について尋ねたアンケートでは日本国内でも半数近くの人が「自宅」と回答しています。

今回のインタビューをご覧いただいたことをきっかけに、将来のことを考えたり、ご家族やパートナーと話をしてみませんか。

よいとこ 花水 遥

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