訪問看護ステーションよいとこは、“あなたの価値観を大切にし、あなたらしい暮らしを支えます。”を理念として掲げ、5つの基本方針を定めています。
- ①ご利用者様・ご家族の思いを大切にした看護を実践します。
- ②質の高い看護技術のご提供を目指します。
- ③素早く切れ目のない地域連携で暮らしを支えます。
- ④魅力あふれる人材育成を目指します。
- ⑤笑顔あふれる看護の職場をご提供します。
今回から5回に渡ってこれらの方針についてお伝えし、よいとこの特徴を皆様にお伝えできればと思います。
第1回は「ご利用者様・ご家族の思いを大切にした看護」についてです。
エピソードをもとに紹介します。(登場する人物は架空の人物です。画像はイメージでエピソードとは関係がありません。)
【エピソード】
藤五郎 梅さん(仮名)88歳、誤嚥性肺炎にて入院中。
夫と2人暮らし。
入院先での退院前会議で、初めてお会いしました。梅さん、夫、病棟看護師、医療相談員、介護支援専門員、福祉用具担当者、訪問看護師が参加しました。
梅さんは嚥下(飲み込む)機能の低下により誤嚥してしまい、発熱での入院でした。抗生剤を投与し、解熱しています。嚥下機能の低下は年齢によるもので、リハビリを続けていても、食事から十分な栄養を摂取することは難しいというのが医師の判断です。誤嚥予防のため入院時から飲食の禁止が続いています。口から食事を食べる代わりに細い管を鼻から胃に入れて栄養を摂る提案を受けています。
梅さんは「甘い物が好きだから少しは食べたい。口から取れないのであれば、それ以上は望まない。管は入れたくない。」と返答しており、その考えは「今も変わらない」と話されました。
夫は「少しでも食べられるようになってほしい。」と話されました。
現在は、連日点滴を行い水分を確保しています。しかし、十分な栄養が取れない状態が続いており、予後は長くないことが梅さんと夫に告げられています。
最期の時をどのように過ごしたいかと聞かれ、
梅さんは「退院し自宅で過ごしたい。」
夫は「帰ってきたら私がみます。」と返答されていました。
退院後は、訪問診療を受けるように提案され、退院後も点滴を継続する予定です。夫から食べることについて要望がありました。
夫「入院してから飲食の禁止が続いていて、私が面会するたびに甘いものが食べたい、買ってきてほしいと言われるんです。私も少しでも、食べさせてあげたいと思っています。食べさせてあげられないでしょうか。」と話されました。
大事にしたいのは、梅さんの「食べたい」という思いです。
病院でも家でも体調が変わるわけではありませんが、どうしたら梅さんの思いを叶えることができるのか看護師は考えました。
退院後主治医となる訪問診療の医師や、本人・家族に加え、看護師などの多職種が集い、意見交換、意思や方針の確認を行うことにしました。
その結果、全員が「誤嚥のリスクを承知の上で極少量、味わう程度の経口摂取を行う」ことに合意することになりました。
リスク重視で禁飲食を続けるのか、
リスクを承知の上で食べるのか。
対応は180度違う結果になっています。
皆さんだったらどちらを選びますか?それはその人の考え方によって変わります。
どちらが良い・悪いではなく、その人自身の「思い」を大切にしたいと考えます。
あなたの価値観を大切にし
あなたらしい暮らしを支えます
