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訪問看護は、どんなサービスなのか

訪問看護は、どんなサービスなのか

 

これから訪問看護を利用される方や利用を検討している方に、わかりやすく説明したいと思います。

 

 

ある日の訪問看護サービスの様子をお伝えします。

1.訪問開始から始まり、2.問診、3.検温、4.観察、5.日常生活援助、6.家族支援、7.訪問終了まで時間の経過とともに解説しながら説明します。

 

利用者のAさんは、食欲は旺盛でお話も出来るのですが、一日中ベッドで寝て過ごしています。週3回訪問看護を利用し、その他にもデイサービスを週2回利用しています。

 

訪問するのは池上看護師です。

では、訪問の様子を見てみましょう。

 

  

 

13:00

 

1.訪問の始まり

 

『ピンポーン』玄関のチャイムが鳴りました。予定通り、訪問看護師がやって来ました。

 

看護師 「こんにちは。訪問看護の池上です。」 

 家族 「はーい、どうぞ。」 

看護師 「Aさん、こんにちは。」

Aさん 「こんにちは。」

 

訪問時の配慮

看護師が、事務所の車で来ました。

よいとこの車は、見た目は一般の車と同じで、車に【訪問看護ステーション〇〇】と名前は書いてありません。

『看護師が家に来ているのを知られたくない』と考える方に配慮しています。

自宅の駐車場に停めさせてもらったり、警察に届け出た駐車許可証を出し路上に駐車することがあります。

ご近所の皆様の迷惑にならないように配慮します。

訪問時、手洗いを行います。

新型コロナによって、より感染対策に留意しています。自分たちが感染源とならないための対策として手洗い場を借りています。

  

 

  

13:05

2.問診

 

体調や日常生活の様子について、利用者さん・ご家族からお話を伺います。

 

週1回の定期的な訪問であれば、1週間の間に起こった体調の変化や生活の様子、困りことなどを伺います。それぞれの症状に応じた対処法を看護師が提案します。

 

Aさん「お腹すいたわ。」

看護師「お腹すいたんですね、食欲がありますね。」

 家族「そうですね、食欲があります。食べてもすぐにお腹が空くみたいで。」

看護師「以前よりも(食べる量は)増えていますか?」

 家族「そうなんですよ、昼はパン1個ですが、朝はお茶碗一杯は食べられるようになりました。」

看護師「食べる量が増えてよかったです。」「ムセはどうですか。」

 家族「たまにムセはありますね。(食べ物を)やわらかくしたり、小さくカットしています。」

看護師「食べやすくしていますね。助かりますね。」

Aさん「ほんと、食べやすいわ。」

【看護師の目線】

池上看護師は、食欲や食事量だけでなく、嚥下(飲み込み)機能を評価していきます。

筋力が低下するように、食物を飲み込む力(嚥下力)が低下することがあります。間違って飲み込むことを誤嚥といい、肺炎を引き起こす要因になります。この肺炎を防ぐために、池上看護師は嚥下機能に注目して観察をしています。

  

 

  

13:10

3.検温

池上看護師が体温、呼吸数、脈拍、血圧、SpO2測定を行います。

【解説】

正常値は、以下の通りです

 体温(36~37度) 

 呼吸数(16~20回/分) 

 脈拍(60~100回/分)

 血圧(120/80mmHg以下) 

 SpO2(96~99%)

バイタルサインと呼ばれており、日本語直訳では生命徴候と呼ばれ、それぞれ正常値があります。正常値から逸脱していても、年齢や病状により許容できる値は異なります。

利用者さまのバイタルサインを確認し、異常な値ではないか、先週と比較してどうかを見て行きます。異常な値でも、要因が明白で、次回の訪問まで経過を見てもいい状態なのか、それとも医師の診察を必要としている状態か判断します。

 

看護師「血圧は119/73ですね。」

Aさん「変わらないね。」

看護師「変わりませんね。以前は80~90台と血圧が低い状態が続いていましたが、最近は100~110台と安定するようになりました。」

看護師「寝ていることが多い状態ですので、急に起き上がるとめまいがあるかもしれません。注意してください。ゆっくりと起き上がりましょう。」

 家族「そうですね。デイサービスの方も心配していました。座っている時間が長くならないように配慮したり、送迎中も声をかけてくれているようです。」

【判断と対応】

姿勢や測定方法で血圧は変動してしまいます。血圧が異常な値かどうか、測定時の状況やこれまでの経過、今ある症状を評価し、異常かどうか判断します。看護師といえど、その判断や対応に悩むこともあり、その場合は同僚や管理者や主治医に相談します。本人だけでなく、家族の気づきや違和感も判断するために重要な要素になるので、率直にお話しください。

今回の訪問では、血圧が低めで起き上がる際にめまいを起こすリスクがあると判断し、具体的な場面を想定し注意を促し対応を示しています。

 

 

4.観察

 

利用者さんの状態に応じて、心身の症状について確認します。

Aさんは膝の慢性的な痛みを抱えており、痛みのために車椅子への移乗が億劫になっています。外出機会が減るばかりか、起き上がって過ごすことができなくなっています。

Aさんの膝の痛みは急に曲げたり動かすことで強くなります。又、痛みを繰り返し受けることで恐怖が増して、動かしたくないと考えてしまいがちです。そんな時は力が入りがちで触れることにも不安が生まれます。ゆっくりと触れることを本人に伝えながら、触れることに慣れたら、少しずつ動かしてみます。本人の不安や痛みを確認しながら行うことが重要です。

池上看護師は痛みの程度を評価をしながら、おむつ交換のための準備運動として、膝を動かしていきます。

 

看護師「膝を見せてください。」

Aさん「はい。」

看護師「熱や腫れはないですね。膝に触れますよ、ゆっくり動かしてみましょう。」

Aさん「・・・痛いです。」

看護師「痛かったですね、もっとゆっくり動かします。どうですか。」

Aさん「怖いわ。」

看護師「少しさすります。力を抜くようにゆっくりと深呼吸しましょう。スー、ハー、です。」

「動かさずにいると筋肉や関節が固くなってしまって、さらに痛みが強くなります。ゆっくりと時間をかけて動かし始めてください。」

「深呼吸しながら行いましょう。」

「痛みはどうですか。」

Aさん「大丈夫です。動いてますか。」

看護師「スムーズに動かせるようになってますよ。」

【不安を和らげる】

Aさんは膝が痛み、痛みに対する不安も強いようです。看護師は動作ひとつひとつを説明しながら関わっています。伝えたいことが、伝わっているか確認しながら行うことが重要です。

  

 

  

13:20

 

5.日常生活援助

 

利用者さまの状態に応じて、清潔や食事の介助、歯磨き、オムツの交換、着替えなどを実施します。

 

看護師「ゆっくり横を向いていきます。動きますよ、せーの。」

Aさん「よいしょ。」

看護師「ズボンを脱ぎますよ。」「痛みは大丈夫ですか。」「裾を通していきます。」

 

(Aさんはできる範囲で腰を浮かせたり、手すりを掴んで身体を支えてくれます。看護師はAさんの動きや頷きを確認しながら介助します。)

 

看護師「寒いですね、一度掛け物を羽織りましょう。」

(寒さや羞恥心に配慮するために掛け物をかけました。)

Aさん「ありがとう、寒い寒い。」

 家族「1人ではシーツを変えることができなくて。お願いできますか。」

看護師「お任せください。」

【介助時の心得】

着替えの介助ですから、看護師が全て介助して着替えても良いのですが、介助すること以外にも目的があります。最も大きな目的は、介助を受けながら“自分で着替える”ことにあります。“着替えさせられた。”と“着替えられた。”には大きな違いがあります。自分で行うことは、できた満足感や着替えて気持ちいいなどのプラスの感情に結びつきやすく、やってもらったことは申し訳なさや恥ずかしさなどマイナスの感情を感じやすくなります。看護師は、日常生活の中でも着替える動作ひとつの中にもできるだけ前向きな感情を持ってもらいたいと考えています。

さらに、急に動かすと痛みが生じる膝も準備運動を十分に行えたので、膝の痛みは幾分か和らいだようです。

看護師「これから歯磨きを行います。よろしいですか。」

Aさん「ありがとう。」

看護師「磨ききれないところがありますね。お手伝いしますね。」

   「さあ、起き上がって、うがいをしましょう。」

Aさん「さっぱりしました、ありがとう。」

 

【歯磨きの重要性】

食べ残しの有無や歯や歯茎のトラブルがないか観察します。食べ残しが多いと虫歯になったり、歯茎に炎症を起こし、出血しやすくなります。口臭の原因にもなります。ブラッシングし汚れを取ることは、口腔内のマッサージにも繋がり、唾液の分泌促進になります。唾液は口腔内をきれいにします。唾液には殺菌作用があり、虫歯や歯槽膿漏の予防だけでなく、肺炎予防にもつながります。

  

 

  

13:40

6.家族支援

 

看護師「(家族へ)、お疲れですか。」

 家族「朝はバタバタしてしまって。大変でした。」

看護師「Aさんのことだけではないですもんね。」

 家族「家族の事だけならいいですよ。朝にトイレや着替えが重なると大変で。」

看護師「よく頑張っていらっしゃる。」

 家族「時々なので、まだいいかもしれないです。無理はしないようにしてます。」

看護師「サービスの追加もケアマネさんに相談しましょうか。」

 家族「そうですね、お願いします。」

 

【支える家族を支える】

家族は主介護者として身の回りの世話を担う事も多く、介護負担に悩み、疲弊することがあります。家族を支援することも訪問看護師の役割です。

 

  

  

13:50

7.訪問終了

 

看護師「◯日の13時に伺います。」

   「もし37.5度を超える熱が出たら電話をください。」

 家族「わかりました。その時は来てもらえますか。」

看護師「可能です。具合が悪いときは心配だと思うので、緊急訪問も考えて相談しましょう。」

 家族「ありがとうございます、ちょっと心配な時には連絡します。」     

看護師「今日はここで失礼します。」

 

【次の訪問まで備える】

次回訪問日時を確認します。次回訪問までの間に予期せず、急な体調不良があれば、緊急に電話相談したり、訪問を受けることができます。

どんな時に連絡したらいいのか迷う方が多いので、Aさんの体調について説明し、異常とはどんな状態の時を指すのかをお伝えします。

 

訪問開始から終了までおよそ60分を要しました。

 

 

最後に

いかがでしょうか、訪問看護のサービスについてご理解いただけたら幸いです。ただし、訪問看護が行うサービスは様々あります。ご利用者様お一人お一人の希望に叶うように調整することができますので、まずはご相談ください。直接、よいとこまでお電話いただけます。ホームページには問い合わせフォームもあります。

今回はお伝えしやすくするために、利用者様に許可をいただき写真を掲載しました。エピソードや会話は架空のものです。

 

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