「訪問看護は何をするの?」
「家でのケアってどんな感じ?」
訪問看護は知っているけど、実際、何をするのかわからないことがたくさんありますよね。
今回は、よいとこの訪問看護師・佐藤の1日に密着して、訪問看護の様子をお伝えできればと思います。
プロフィール
訪問看護師 佐藤 泰宏
2007年京都大学医学部附属病院、2012年滋賀医科大学病院、2016年新潟大学医歯学総合病院にて勤務。2019年から現職。
出勤前
この日は、前日夕方から電話番を担当していましたが、緊急連絡はありませんでした。
常に電話に出られるようにスマホを携帯し、時折着信がないか確認していますが、いつもの通り入浴もしますし、ベッドで眠ります。もちろん必要があればすぐに訪問できるように訪問カバンは準備しており、会社の車で自宅に帰っているので、直接利用者様宅に訪問が可能です。
当たり前ですが、電話番の日の飲酒は厳禁ですし、外出は控えています。家族には夜中に突然いなくなることもあると理解してもらっています。
緊急連絡があった場合、iPadで電子カルテに記録するとクラウド上で共有され、朝出勤した際に各スタッフが情報を共有できます。朝のミーティングで対応を協議したり、後日出勤したスタッフもこの日のエピソードを確認できます。
8時30分 ミーティング
本日訪問予定のAさんは訪問時に膀胱留置カテーテルを抜去し、午後の訪問診療で再留置が必要か判断される予定。診察結果について、事務所に電話連絡があると申し送りました。
【移動】1件目の訪問に自動車で向かいます
9時00分 1件目の訪問
訪問するとAさんが「待っていました。」と普段よりも興奮された様子で声をかけてくれました。今日は膀胱留置カテーテルを抜去し、排尿ができるか確認する日。そりゃそうです。長い間繋がれていた管が自分から離れるとなるとは嬉しいことでしょう。抜去した後は本人•妻に生活上の指導を行います。妻の協力を得て排尿記録をつけることにしました。腹部痛の有無や排尿量、尿性状の変化などに気がついた時に連絡するように説明し、次回の訪問までこちらから電話連絡し異常がないか確認することにしました。
【移動】2件目の訪問先まで移動です。時間があるので記録をします。
10時30分 2件目の訪問
玄関は風通しを良くするために扉が少し開いていました。
「訪問看護でーす。」
「・・・」
「お邪魔しまーす。」
「・・・」
返事がありませんが、これだけでは異常事態かどうか判断はできません。Bさんは返事をしません。「チャイムはうるさいから止めたし、返事はしないけど、勝手に入ってきていいから。」ということになっています。以前、同行したスタッフが返事がないことに驚き、倒れているのではないかと心配していましたが、出迎え方もそれぞれのお家の流儀があります。
Bさんは、末期がんと診断され、外来通院しています。訪問看護は週1回、訪問介護を週1回利用しています。買い物や通院は1人で行きますし、アマゾンプライムで好きな映画を見ながら過ごしています。痛み止めの湿布は痒みが出てしまうので、内服薬が増えました。急に痛くなった時のために頓服を処方してもらいましたが使うことはありませんでした。足の浮腫が強まり、ベッドでフットケアをします。「利尿剤をもらっても変わらない。」といい、次回受診時に主治医に相談する予定です。医師からホスピスや施設の利用について提案がありました。自宅での生活に不安を感じていたので病院の相談員やケアマネージャーに相談し、施設の見学に行くことになりました。
12時00分 昼休憩
休憩のために事務所に戻ります。ダイエット中なので炭水化物の量を調整します。
13時00分 3件目の訪問
地元で働いているとつながりのある方に出会うことがあります。Cさんは私が小さなころ大変お世話になった方とご兄弟でした。健康状態を観察させてもらう中で、声をかけた時の反応や痛みなどの症状だけではなく、食事量や食欲、身体の動きにくさが影響する着替えなども大切な情報になります。受診の際、ご家族から主治医に報告していただけるよう日々の状態を評価し伝えています。
足などの骨が出っ張っているところが赤くなり目立ってきていました。枕を挟むなど対応していましたが、悪化予防のために、先週エアマットに変更しました。Cさんのご家族は「マットがずれてきてしまう。」「うーっという音がずっと鳴っている」などウレタンマットレスを使用していた時との違いに戸惑っていました。次回の訪問時、福祉用具の担当の方が来てくれることになり相談することになりました。
【移動】必ず、安全運転に心がけます。訪問看護のトラブルで多いのが交通事故と言われています。移動中に、「体調を悪くしていないかな。」「うまく話できるかな。」と心配事が頭をよぎってしまいます。心の余裕がないと事故の元。時間的にも余裕を持って移動ができるように訪問スケジュールを組んでいます。
14時30分 4件目の訪問
Dさんは1人暮らしをしていましたが、誤嚥性肺炎を繰り返すなど体調管理が難しいことやバリアフリーで生活しやすい環境を求めて施設に入所されました。健康状態の管理のために、月1回訪問診療を受けながら、訪問看護は週1回訪問しています。施設ではコロナ感染予防のため、検温と感冒症状の有無を確認し入室します。施設内に併設されている介護サービスを提供するスタッフの方々から、日頃の様子を伺います。また、薬剤の管理や受診などのスケジュール調整、付き添いをおこなっていただいています。
Dさんはとにかく笑顔が素敵で、いつも笑顔で迎え入れてくれます。その反面、体調の変化などは表情に出やすいかもしれません。この日は誕生日の前日でしたので、バースデイソングを歌いお祝いを伝えるととても喜んでくださいました。私もとても嬉しい気持ちになりました。
【電話対応】次の訪問先に向かう前に折り返しの電話をします。4軒目の訪問中に、ケアマネージャーさんから利用者様について問い合わせがありましたが、急がないとのことだったので訪問中のケアを優先させてもらいました。
16時00分 5件目の訪問
チャイムを鳴らすと大きな声で「どうぞ」と出迎えてくれました。居間で検温を行います。デイサービスにて検温した値を確認しながら血圧の変動を確認しました。歩いてもらって動きにくさや転倒の有無を確認します。転倒予防のために、手すりを使用することやゆっくりと振り返ることを伝えます。妻からも日常の様子を伺いました。夜中に声を上げていたことがあったようです。前回の訪問時に内服カレンダーに準備した薬が内服できていたか確認し、次週の薬を準備します。リハビリテーションは、ストレッチや廊下歩行、訓練を行います。本日はふらつきも強く「今日はやりたくない。」と乗り気でない様子でした。疲労感や頭痛もあったので実施せず、休息をとってもらいました。
17時30分 退社
訪問後、車内で記録を行い、そのまま直帰しました。
まとめ
今回はある日の訪問看護師の1日を紹介させていただきました。訪問の件数やタイミングは様々です。働くスタッフの雇用形態や事情、予定に合わせて柔軟にシフトを作っています。働き方やどんな風にケアしているのかなど聞いてみたいと思う方がいればご連絡をお待ちしています。
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